芸術監督の部屋 第2部:プログラム提供型機関としての諸課題

2-21 財団法人地域創造の創設と事業

次に考察するのは、財団法人地域創造の活動と支援である。これは旧自治省を主務官庁として設置された財団法人であり、全国知事会、全国市長会、全国町村会等の関連団体の合意によって1994年に設立されている。2014年には一般財団法人に移行した。目的は芸術文化活動を通じた地域の振興を図るため公立文化施設のソフト開発の支援をするものであり、「地域における公立文化施設の利活用の促進を支援、地域において活動が期待されるアーティストの確保、地方団体が単独では実施困難な事業を支援、芸術文化活動を通じた地域づくりのための調査研究等」iの活動を行っている。

「一般財団法人地域創造の事業には、地域の文化・芸術活動を担う人材の育成に取り組む「研修交流事業」、公立文化施設の活性化を支援する「公共ホール等活性化支援事業」、ふるさとの誇りである伝統芸能等の保存・継承・発展 を支援する「地域伝統芸能等保存事業」、地域の文化・芸術環境づくりに役立つ情報発信・調査研究を行う「情報交流・調査研究等事業」の4部門」iiがある。研修交流事業としては、市町村長等を対象とした市町村長セミナー、市町村職員のための地域創造セミナーのほか、特色的な事業としてステージラボがある。これは公立文化施設職員等を対象とするもので、ホール・劇場等の企画制作事業などのスキルを身につけるために、数日間かけるワークショップスタイルの研修を行う。このユニークな企画が、各地の公立文化施設職員の意欲とスキルを向上させ、そうしたスキルを持った職員のネットワークを涵養してきたことは間違いないだろう。

地域創造は、ステージラボのように、ワークショップ形式の事業形態を強く意識しており、市町村等の公共ホールに、オーディションで選ばれた演奏家とコンサートの企画制作経験が豊富なコーディネーターを派遣し、地方公共団体等と共催でコンサートとアクティビティ(アウトリーチをはじめとする演奏交流プログラム)を実施する公共ホール音楽活性化事業、ダンス領域の公共ホール現代ダンス活性化事業、そしてアウトリーチのスキルを育む公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業や演劇関係では、地域創造と複数の公共ホールが連携し、演劇の巡回公演と地域交流プログラムを実施する公共ホール演劇ネットワーク事業、演劇的手法を使ったワークショップのリージョナルシアター事業などを行っている。このように、地域創造の事業は対象を公立文化施設とその管理母体である地方自治体を主ターゲットにすることで、公立文化施設のソフト開発能力を押し上げようという強い意図を読み取ることができる。これは、文化庁や芸術文化振興基金よりも、より意識的に公立文化施設のソフト力の向上に特化させていると言える。アウトリーチ、ダンスなどマイナーな分野への視座、障碍者へのアプローチなどユニークな展開を行った。文化庁の補助金、助成とは一味違った枠組みを提出したことは大きい。

ただ、一方で、これらの事業に派遣されるアーティストは、その水準を保つ意図により、オーディションによる選択を基本としている。しかし、このことは、残念ながら、東京圏の講師やアーティストがどうしても中心になりやすく、地域のアーティストや企画者を地域で採用し、スキルアップしてゆく体制に結び付きにくい性格もあるように思われる。そろそろ、地域の人材とかれらの創造力を信じ、人材ともども地域で主体的にワークショップなどを構築するような企画を推進することが必要なのではないか。以上、文化庁と芸術文化振興基金、そして一般財団法人地域創造による、文化芸術関連の助成や補助金について考察をした。助成金には、このほかにもセゾン財団などの民間の助成金もあり、それらを活用することで、財政難の今日、地域の文化芸術活動を活性化するためにはいろいろな方策をとることができるだろう。

上記のように、我が国の公的助成はかなり充実をしてきており、アーツプラン21の策定、芸術文化振興基金の設立、一般財団法人地域創造の設立などを通して、1990年以後、次第に、戦略的に助成をする方向に大きく舵を切ってきた。これらの枠組みはいわば、織物の経糸のように筋が通っている。そして、応募方式や選考の方法もわかりやすくなっている。すなわち、それらを活用するのは、文化芸術団体や地方自治体・公立文化施設側のスキルにゆだねられている。どのような織物を描くのか、助成金の利用スキルをしっかり研究し、自らの創造性に重ねてゆく力が、受け手側に問われているように思われる。

  1. 地域創造とは、[3]主な活動内容、https://www.jafra.or.jp/about/about.html、accessed 2020.5.20
  2. 地域創造パンフレット、2017年、https://www.jafra.or.jp/fs/2/3/1/3/1/_/jafra_pamph.pdf、accessed 2020.5.20
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