芸術監督の部屋 第2部:プログラム提供型機関としての諸課題

2-20 文化庁の直接補助事業

文化庁・芸術文化振興基金の文化芸術助成の枠組み(舞台芸術関連を中心に)

次に、現在の文化庁そのものによる支援を見る。その枠組みは次のようなものである。文化芸術創造活動への重点支援には、芸術祭、芸術家の顕彰、戦略的芸術文化創造推進事業があり、地域の文化活動支援には劇場・音楽堂等機能強化推進事業(芸術文化振興基金)も含まれるが、直接の助成としては、国際文化芸術発信拠点形成事業、文化芸術創造拠点形成事業、障害者等に対応した劇場・音楽堂等の固定資産税等の特例がある。世界に羽ばたく新進芸術家等の人材育成には新進芸術家の海外研修、実演芸術家連携交流事業、大学における文化芸術推進事業、文化芸術による子供育成総合事業などが挙げられている。そのほかには、日本映画の振興、メディア芸術の振興、芸術教育・文化部活動、国際交流・協力、企業等による芸術文化活動への支援、障碍者の文化芸術活動の推進などが挙げられている。

文化庁の支援は大きく分けて、アーティスト、アーティスト関連団体側への支援と行政側への支援の2種類がある。「芸術文化振興基金」を除くと、アーティスト、アーティスト関連団体側への支援は「文化芸術創造活動への重点支援」の中の「戦略的芸術文化創造推進事業」と「世界に羽ばたく新進芸術家等の人材育成」などがある。

行政側への支援としては、芸術文化振興基金のほかに、国際文化芸術発信拠点形成事業、文化芸術創造拠点形成事業、障碍者等に対応した劇場・音楽堂等の固定資産税等の特例などで構成されている。

戦略的芸術文化創造推進事業は、毎年プログラムの枠組みは変わるが、平成30年度は「文化芸術による国家ブランドの構築と経済的価値等の創出や国際発信力を高めるための新たな展開に関する取組」、「地方や離島・へき地等において,優れた文化芸術活動を鑑賞・参画する機会と社会的価値等を創出する取組」、「共生社会に向けた芸術文化プロジェクト」によって構成されている。助成採択された事業は、主に民間の機関が提案したユニークな活動である。

世界に羽ばたく新進芸術家等の人材育成は、新進芸術家の海外研修、時代の文化を創造する新進芸術家育成事業、実演芸術家連携交流事業、大学における文化芸術推進事業、文化芸術による子供育成総合事業が含まれている。

文化庁が行う行政側への支援は、「文化芸術創造拠点形成事業(地域における文化施策推進体制の構築促進)」がその枠組みである。それは「2020東京大会とその後を見据え、地方公共団体が主体となって取り組む文化芸術事業を支援することにより、地方公共団体の文化事業の企画・実施能力を全国規模で向上させるとともに、多様で特色ある文化芸術の振興を図り、ひいては地域の活性化に寄与することを目的」とするものであり、地方公共団体(都道府県、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。))が対象であり、先進的文化芸術創造活用拠点形成事業、文化芸術創造拠点形成事業、文化芸術創造拠点形成事業(地域における文化施策推進体制の構築促進)の3つの枠組みが用意されている。

先進的文化芸術創造活用拠点形成事業は、現代アート・実演芸術、メディア芸術、工芸・生活文化、共生社会のいずれかにおいて、文化芸術資源を活用して文化芸術事業・人材育成事業・ネットワーク構築事業を行うことで新たな価値(経済的価値や社会的価値等)を創出する先進的かつ総合的な取組であり、公共団体が地域の文化芸術資源(現代アート・メディア芸術・工芸・障害者芸術など)を活用し、芸術団体や大学及び産業界等と連携して実施する持続的な地域経済の活性化や共生社会の実現等につながる先進的な取組等を支援するものであるi文化芸術創造拠点形成事業は地方公共団体が専門性を有する組織(域内の文化芸術の振興を図ることを目的とする文化事業団等)を活用した文化芸術政策の企画立案・遂行、地域の文化芸術活動への助成、調査研究等を実施する体制の構築を促進するもので、地方公共団体が主体となり、地域住民や地域の芸・産学官とともに実施する、地域の文化芸術資源を活用した取組が対象であるii

地域における文化施策推進体制の構築促進事業は、地方公共団体が専門性を有する組織(域内の文化芸術の振興を図ることを目的とする文化事業団等)を活用した文化芸術政策の企画立案・遂行、地域の文化芸術活動への助成、調査研究等を実施する体制の構築を促進する取組であるiii

これらの助成事業に見るように70年代、80年代の国の文化芸術活動支援に比べ、平成から令和にかけて、国の文化政策とその補助金制度は大きく枠組みが進化をしている。特に助成システムの目的ははっきり明示され、機能強化が大きくなされた。

文化政策についての評価の方法も進化している。「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」(平成23年2月8日閣議決定)において、「従来、社会的費用として捉える向きもあった文化芸術への公的支援に関する考え方を転換し、文化芸術への公的支援を社会的必要性に基づく戦略的な投資と捉え直す」ivという基本的な認識の下、「文化芸術への支援策をより有効に機能させるため、独立行政法人日本芸術文化振興会における専門家による審査、事後評価、調査研究等の機能を大幅に強化し、諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みを導入する。このため、早急に必要な調査研究を行うとともに、可能なところから試行的な取組を実施し、文化芸術活動の計画、実行、検証、改善(PDCA)サイクルを確立する。」との方針が示された。

また、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)」(平成27年5月22日閣議決定)において、「文化芸術への支援策をより有効に機能させるための日本版アーツカウンシル(専門家による助言、審査、事後評価、調査研究等の機能)の本格導入について、現在、独立行政法人日本芸術文化振興会において実施されている試行的な取組の結果を踏まえ必要な措置を講ずる。」との方針が示されました。」vこのPDCAサイクルは平成28年度からは本格導入するされた。また、審査基準の公表viも整備されている。

  1. 令和2年度採択事業には、富山県・石川県・福井県:「国際北陸工芸サミット」開催事業、岐阜県・可児市:文化芸術活動を通じた共生社会づくり、滋賀県の障害者等の文化芸術による共生社会づくり事業、京都市のKYOTO CULTIVATES PROJECTが採択されている。
  2. 令和2年採択事業は、札幌市:ユネスコ創造都市札幌―芸・産学官の連携によるメディア芸術拠点形成事業、札幌市民交流プラザ文化芸術創造発信事業、東川町:写真文化首都推進事業、八戸市:「アートのまちづくり八戸」推進プロジェクト、大船渡市:世界碁縁芸術文化祭~第七回碁石海岸で囲碁まつり・音楽祭・アート祭、花巻市:宮沢賢治を活かしたまちづくり~賢治フェスティバル開催事業~、仙台市:仙台舞台芸術プロジェクト、秋田県:文化の力で秋田を元気にプロジェクト、山形県:山形県文化による地域活性化事業、山形市:「東北絆まつり」開催を契機とした東北文化の認知向上と継承・発展及び交流人口拡大、ユネスコ創造都市やまがた映像文化交流事業、鶴岡市:鶴岡市ユネスコ食文化創造都市推進事業、会津若松市:あいづまちなかアートプロジェクト事業、相馬市:音楽による生きる力をはぐくむ事業、取手市:創造郊外都市〜共創型アート・センター実験室2020、つくば市:メディアアートによるまちづくり事業~つくばメディアアートフェスティバル~、松戸市:PARADISE AIR、杉並区:地域の文化芸術拠点形成事業、豊島区:舞台芸術による社会包摂事業、八王子市:八王子市文化芸術ビジョン推進事業 ~東京2020文化プログラム推進事業~、調布市:調布国際音楽祭 Chofu International Music Festival、横浜市:ヨコハマ・パラトリエンナーレ、川崎市:芸術のまち・かわさきGrow Up事業、逗子市:逗子アートフェスティバル、新潟県:舞台芸術への県民参加推進プロジェクト、新潟市:マンガ・アニメを活用したまちづくり構想、高岡市:工芸と文化芸術による文化創造都市高岡推進事業、南砺市:南砺市文化芸術創造都市事業、金沢市:金沢JAZZ STREET開催事業、ユネスコ創造都市金沢・工芸文化発信事業、山梨県:やまなしメディア芸術振興事業、飯田市:人形劇で世界とつながる「小さな世界都市 飯田」創造発信事業、駒ケ根市:音楽を通じて生きる力を育む事業、大町市:北アルプス芸術文化国際交流推進事業、浜松市:2020文化プログラム推進事業「はままつ響きの創造プロジェクト」、掛川市:まちづくり芸術祭「かけがわ茶エンナーレ2020」、名古屋市:歴史文化普及啓発事業~やっとかめ文化祭~、名古屋市:文化芸術があふれるまちづくりプロジェクト~アッセンブリッジ・ナゴヤ~、豊橋市:穂の国とよはし芸術創造発信事業、豊田市:豊田小原和紙の情報発信と創造活動拠点づくり事業、守山市:守山市文化芸術振興事業、京都府:京都府「地域•アート•出会いプロジェクト」、京都市:子どもたちが文化芸術に触れる機会の創出(伝統芸能ワークショップと公演鑑賞)、京都市:若手芸術家等の社会的・経済的地位向上のための基盤づくり事業、京都市:「劇場×若者=地域創生の未来」事業、日向市:歴史が重なる小さなまち・向日市文化芸術創造拠点形成プロジェクト、大阪市:伝統芸能を活用した大阪の魅力開発促進事業、枚方市:文化芸術による交流促進・賑わい創出事業、神戸市:音楽・映画・IT等の地域文化資源を活用したクロスメディアイベントによる地域活性化と文化振興事業、豊岡市:文化芸術創造交流事業、南あわじ市:アジア国際子ども映画祭、奈良県:奈良県文化観光発信プロジェクト事業、奈良市:「創造と学びがあふれる都市」アートによるまちづくり事業、九度山町:「芸術と歴史・文化が融合する町」地域振興事業、鳥取県:「アートピアとっとり」プロジェクト2020、障がい者と健常者が共に創る劇団事業、出雲市:出雲市文化観光拠点形成事業~出雲の國づくり 新・文化圏計画~、福山市:ふくやま芸術文化ホール文化芸術創造拠点形成事業―コネクテッドシティふくやま―、安芸高田市:「Hiroshima Kagura」創造拠点形成事業、宇部市:UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)開催業務、山口市:アートを活用した文化芸術創造拠点形成事業、徳島県:アートを活用した文化芸術創造拠点形成事業、松山市:道後温泉まちづくりアート事業、東温市:東温アートヴィレッジフェスティバル開催事業、内子町:内子町文化創造事業、高知県:高知県まんが王国・土佐推進事業、大分県:第22回別府アルゲリッチ音楽祭開催事業、創造県おおいた推進計画、大分市:若い大分市民に向けた能楽振興計画、竹田市:竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉でつながる地域文化交流事業(3年目)、南種子町:種子島宇宙芸術祭など、多様なプロジェクトが採択された。
  3. 令和2年採択の採択事業は下記のとおりである。
    神奈川県:神奈川県共生共創事業(共生社会の実現に寄与する文化芸術振興の体制構築促進)、川崎市:共生社会に向けた文化芸術振興推進体制構築事業、浜松市:浜松版アーツカウンシル事業、名古屋市:名古屋における新たな文化施策推進体制の構築、京都府:京都府地域文化創造促進事業、兵庫県:兵庫の芸術文化施策の推進にかかる体制構築促進事業、高知県:高知県文化芸術振興ビジョン推進事業、宮崎県:「アーツカウンシルみやざき」設置事業。
  4. 文化芸術の振興に関する基本的な方針(平成23年2月8日閣議決定)、[1]成熟社会における成長の源泉、https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/hoshin/kihon_hoshin_3ji/01-2-2-1.html, accessed 2020.5.20
  5. 文化芸術活動に対する助成システムの機能強化について、https://www.ntj.jac.go.jp/kikin/artscouncil.html、accessed 2020.5.20
  6. https://www.ntj.jac.go.jp/kikin/about/screening.html
    例1:令和2年度 芸術文化振興基金 地域文化施設公演・展示活動(文化会館公演)審査基準
    【企画内容】
    ア 活動内容が具体的であること イ 活動計画が当該団体等の過去の実績等から推測して実現可能であること ウ 活動の目的及び内容が優れていること エ 地域の文化の振興に資する特色のある活動であること オ 当該団体及び当該活動の今後の発展に期待が持てること
    【運営】
    カ 団体の運営(経理処理を含む)が適正であること キ 予算積算等が適切であること
    【社会性】
    ク 活動が社会的に開かれたものであること ケ 観客層拡充等の努力を行っていること
    【その他】
    コ 助成の緊要度が高い活動であること
    例2: 令和2年度 劇場・音楽堂等機能強化推進事業 (地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業) 審査基準
    【創造性】
    ア 地域の文化拠点としての機能を最大限に発揮する優れた事業であると認められるか。 イ 地域の実演芸術の振興など、地域の文化芸術の発展につながると認められるか。
    【有効性】
    ウ 目標が適切に設定されていると認められるか。 エ 根拠となるデータや実績等により、効果測定が可能な指標が適切に設定されていると認められるか。
    【妥当性】
    オ 社会的役割(ミッション)や地域の特性等に基づき、事業が適切に組み立てられていると認められるか。 カ 助成に値する文化的、社会的(※)、経済的意義等が認められるか。
    【効率性】
    キ アウトプットに対して、事業期間が適切であると認められるか。 ク アウトプットに対して、事業費(積算経費)が適切であると認められるか。
    【持続性】
    ケ 事業を通じて組織活動が持続的に発展すると認められるか。
    ※バリアフリー・多言語対応等、観客や参加者に配慮した取組についても考慮します。
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