芸術監督の部屋 第2部:プログラム提供型機関としての諸課題

2-6 お金さえ払えば、客席はガラガラでも使うことができるという不思議さ

貸館は公平性の原則から、地方自治法において、特別な理由がない限り、その利用を拒むことはできないように規定されているi。運用にあたっては、事業内容による選別は行ってはならないため、抽選や先着順で利用が決まる。大都市を除き、地域の公立文化施設では、多くの場合、客席を満席にするような企画はほとんどない。多くの場合、客席の半分も埋まっていないか、あるいは、舞台を使った練習のように、客席に全く人がいない利用も多い。貸館システムでは、客席に人がいようがいまいが、あるいは、客席の人が楽しんでいようがいまいが、年間の利用率さえ高ければ、施設管理の評価には全く影響がない。むしろ、施設によっては、客席を使わない利用は、利用料金を割り引くシステムを導入しているところもある。これは、稽古や練習でホールを連続して使うようなことを配慮したシステムで、ものをそこで作る場合には利用者にメリットのあるシステムであり、導入に一理ある。しかし、他方で、年間のホール利用を俯瞰すると、ホール利用の割合がある程度あっても、ほとんど観客がいない状態での利用が多いと、何のためのホールなのか、ガラガラの利用に公共性があるのかという疑問も湧いてくる。公的資金を導入して運用される公立文化施設は最終的には年間を通して、どれだけ観客席を満たすことができるかということが問われるべきではないか。しかし、残念ながら、今日の公共ホールにおいて、貸館という間接的な運営によって観客席を年間通して可能な限り満席にするにはどうしたらいいかという点に切り込んだ議論はほとんどない。そうした指標、つまり、年間可能観客動員数で実際の観客動員数を割った値、を作っているところもない。ドイツの公共劇場の年間統計であるTheaterstatistikiiでは、各公共劇場の入場料収入と並んで、総入場者数も明確に示されている。わが国でも、公立文化施設の観客席の埋まり具合にもっと注目しなければならないのではないか。

ガラガラの客席を放置する貸館運営は、適切な練習空間の不足や各貸空間の連携なき切り売りも起因する。例えば、全国の中学や高等学校では、合唱、ブラスバンド、オーケストラ、ダンスなどの部活が盛況である。そして、毎年多くのコンクールで鎬を削る戦いが行われる。他方、学校には大空間は体育館しかなく、体育館は運動部が主に利用するため、いわゆる文科系のクラブが利用できる頻度は低い。さらに体育館の音響特性は悪い。したがって、有名校は利用料金を払ってでも地域の公立文化施設の舞台をつかって練習をする。文化ホールにとってはいいお得意さんである。利用を断る理由はない。むしろ地域の文化芸術の活性のためには、こうした若い活動がたくさん、継続して行われることはありがたいことである。しかし、果たして、すべての練習を舞台で、ガラガラの客席をともなって使う必要はあるのだろうか。ホールに準ずるしっかりした音響特性をもち、ある程度空間にゆとりのある舞台空間並みの練習室があれば、ホールを使う必然性はないのではないか。空調や暖房などの電気代を考えても広い練習室のほうが、ホールの練習利用よりも合理的なはずである。年間、かなりの数のこうした利用があるのであれば、しっかりした練習空間を設置し、ホールはもっと客席を埋めるような活動を促す方がいいはずである。利用実態と公立文化施設の施設内容とのミスマッチがここにある。

  1. 地方自治法第244条
    1. 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
    2. 普通地方公共団体(次条第3項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
    3. 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
  2. Theaterstatisik, Deutscher buenenverein, 毎年統計更新
    http://www.buehnenverein.de/de/publikationen-und-statistiken/27.html
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