芸術監督の部屋 第2部:プログラム提供型機関としての諸課題

2-2 貸館収入、入場料収入などの自己努力による収入では公立文化施設の建設と維持管理費用は回収できない

既往調査から公立文化施設の管理運営について状況を観察してみよう。近年、全国の公立文化施設の管理運営実態に関する調査は多々行われている。最新のものは先に示した、2020年に発表された公益社団法人全国公立文化施設協会による「劇場、音楽堂等の活動状況調査」1である。しかし、この報告書においては、歳出と歳入の各費目の平均値が示されているが、合計は示されていない。おそらく、これは、各地方自治体により、公立文化施設の人件費が別会計になっており、収支決算には計上されていない場合があるなど、統計処理上の課題が多く、正確な合計数値を出せなかったからであろう。実際、公立文化施設の管理運営費は、地方自治体ごとに処理が違っており、一律に把握するのは難しい。ただし、1914年度の「劇場、音楽堂等の活動状況に関する調査研究報告書2」には、直営館他と指定管理者による施設とを別に分けて、それぞれの合計平均収入と支出が示されている。この調査には上記に見るような若干の誤差があると認識できるが、それを承知の上で、全国の平均的な状況を眺めてみたい。

まず、直営館またはその他(国立等)施設の実態である。総収入の平均値は100,628千円であり、一般財源から43.6%、入場料等事業収入は7.5%、貸館収入は13.2%、公的補助金・助成金等で18.2%、その他収入が17.5%となっている。これに対して、支出は人件費が16.9%、事業部門費が23.6%、管理部門費が47.0%、その他が12.4%である。人件費を除いた、事業に関する収支(事業収入/事業部門費)は32%、管理部門の収支(貸館収入/管理部門費)は28%である。実際事業収支、貸館収支は単純ではなく、また人件費分も含まれていないが、それでも、実質の経費の3割程度しか収入がないことになる。次に指定管理施設の収支である。総収入の平均値は197,211千円であり、直営館他の倍弱の予算規模である。この差はどうして生まれているのかは調査からは判断できないが、指定管理料ら58.5%、入場料等事業収入は9.0%、利用料収入は15.9%、公的補助金・助成金等で6.5%、その他収入が10.1%となっている。これに対して、支出は人件費が24.6%、事業部門費が19.5%、施設・設備管理費が39.8%、一般管理費が8.8%、その他が7.3%である。費目が直営館とは少し異なっている。直接の比較は行いにくいが、人件費を除いた、事業に関する収支(事業収入/事業部門費)は46%、管理部門の収支(貸館収入/(施設・設備管理費+一般管理費))は33%である。数字を見ると単純に指定管理施設の方が、収支効率はいいように思われる。単純な比較は難しいが、指定管理施設のほうが、経営努力をしているのであろうか。しかし、いずれの場合でも施設独自の努力で獲得できる収入(入場料収入と施設利用料収入)では施設全体の経営ができない。

そして、それは、施設経営にかかる費用を自力の収入で賄うために入場料を上げればよい、施設利用料を上げればよいという簡単な問題ではないことも理解できるだろう。単純に事業部門収入をカバーするように入場料を上げるとすると、チケット料金は倍以上になることは容易に想像できる。しかし、そのような金額の値上げは現実的ではない。なぜなら、入場料は、経済的にゆとりの少ない人も含めて、地域の観客が購入しやすい価格に設定されており、また、貸館料金も公の施設として、不満の生じない価格に押さえられているからである。貸館事業は、地方自治法に規定される公の施設としての公共サービスの一つであり、公会堂建築の伝統を引き継ぎ、多くの市民の多様な集会活動の受け皿になっている。つまり、公立文化施設の安い入場料金、利用料金は公共サービスの一環としてとらえられているのである。実際、利用料金が安く設定されているにも関わらず、公立文化施設には、市民から、利用料金をもっと安くしてほしい、あるいは、地域住民の利用と地域外住民の利用とは分けて、地域住民の利用には減免措置を取ってほしいという要請が常に行われ、その都度、料金設定の考え方について、設定されている施設使用料がいかに公益サービスを意識した低い価格に設定されているか説明をしなければならない状況に立たされている。

  1. 公益社団法人全国公立文化施設協会、劇場、音楽堂等の活動状況調査、同上
  2. 公益社団法人全国公立文化施設協会、劇場、音楽堂等の活動状況に関する調査研究報告書、pp.52-55
あいち共同利用施設予約システム
近隣飲食店情報
あおい倶楽部
 

ページトップボタン